ATELIER
―― 時を重ねる創作空間
明治時代に建てられた古民家を、時間の積層を残したまま少しずつ手で整えていった。
軋む床の音や、木の呼吸でゆるやかに揺れる空気。
そのすべてが、静かにインスピレーションを運んでくれる。
ここで生まれる作品は、過去と今がふれあうようにして立ち上がる。
先ずは作業スペースを確保するために、押し入れの拡張作業から始まった。
季節の厳しさにも耐えられるよう壁に断熱材を入れ、白い壁に生まれ変わる様子を眺めながら、木部を染め、棚を補強する作業を重ねていく。
真夏の暑さの中での木工作業は大変でしたが、暗かった部屋が少しずつ光を取り戻していく時間は、とても楽しく充実していました。
今回も和室の押入れを拡張し、作業しやすい空間へと整えていきました。
経年でふわふわしていた床は思い切って撤去し、新たに断熱材と構造用合板で補強。
木部はいつもの塗料で丁寧に染色し、壁には断熱材の上から白い珪藻土塗料を施工。
石膏ボードの継ぎ目もパテで平滑に整え、押入れも広がり、空間全体が明るく爽やかに生まれ変わりました。
押入れ横と階段部分の開口部に、新しい壁をつくる作業。
既存部分を活かしながら、昭和の型板ガラス入り引き戸を丁寧にメンテナンスし、壊すことなく壁として再利用。
開口部には柱を立て、壁を新設し白く塗ると、まるで作品の中のような雰囲気のアトリエに近づきました。
古い畳を撤去し、長い歴史を刻んだ床を水平に整えながら、杉板の無垢材を丁寧に施工。
植物由来の色付けで木目を活かし、白い漆喰の壁とのコントラストが美しい、落ち着いた創作空間に生まれ変わりました。
明治時代の古民家をアトリエへ再生する最後の工程。
圧迫感のあった襖の骨組みを活かしてリメイクし、程よく光が差し込む建具に。
大正時代の新聞を下地に発見しながら、木部をマットブラックで統一。
採光部にはプラダンを、下部はベニヤで補強し、柱の塗装や漆喰塗り、畳からフローリングへの変更も行い、ついに新アトリエが完成しました。
完成、そして制作再開
制作を再開して数か月、アトリエはいつの間にか道具や材料が行き交う雑多な“生きた場所”になっていた。
小さな作品ひとつの裏側には、その何倍もの道具や機材が息づいている。
倉庫や引き出しの奥では、まだ出番を待つ道具たちが静かに眠りながら、そっと順番を待っている。
アトリエ協同制作・撮影・空間デザイン ひのと